ジャガー XKポートフォリオ コンパブチブル
マイナーチェンジを浴びたXKシリーズが、いよいよ昼間の時間本にやってきた。さっそくその実力を確かめるべく、箱根で行なわれていた試乗会に足を運んでみることに。[ 続きを理解する ]
評価
評価項目について
動力性能9点格段に洗練化され官能的になった直噴5リッターV8エンジン。
操縦安定性9点一番段階可変ダンパーの採用で快適性、コントロール性ずば抜けた。
パッケージング8点ジャガーならではの豪勢なスぺース利用。
安全性能8点デ本職イアブルボンネット(歩行者ダメージ低減)を装備。
環境界性能8点ライバルをリードする低CO2排出パフォーマンス。
総合評価9点ジャガーの「職人芸」が感じとれる。
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直噴5リッターV8NA搭載ポートフォリオを新設定。 ジャガーのスポーツカー、XKのルーツは1948年に誕生したXK120。以来今昼間の時間まで時代の荒波に揉まれつつも、連綿とジャガーネス(ジャガーらしさ)の伝統を浴び継ぎ開 発されてきた自動車文化財的なモデルである。
今回デビューした新型XKシリーズは、先代の正常進化型といえるが、なにより完全新設計の直噴5リッターV8エンジンが搭載されたことがビッグニュース。
このご時世に、という声も聞こえそうだが、高級スポーツカー市場ではライバルに対し、何としても動力性能で優位に立ち上がることが不可欠条件。新エンジンは天然吸気(NA)で385ps/515Nm、スーパーチャージャー(SC)付きのXKRでは510ps/625Nmというスペックを持つ。
これまでの4.2リッターV8の出力はNAで298ps、SCが416psだったからその上昇幅はきわ入れ大きい。それでいて若干だが燃費が向上している。
クーペとコンパブチブルの2車型が準備されるのは以前通り。NAエンジン搭載車はXKポートフォリオというサブネームが付く。内装がXKRに準ずる豪華仕様だ。
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スポーツカーの王道を足を運ぶパッケージング思想。 スポーツカーにおいて、パッケージング性能の甲乙があるとしたら、それは割り知ってパブとパッセンジャーにとってどれほどの快適スぺースが与えられているかだろう。
その点は不平なし。車検証には4人乗りとあるXKシリーズだが、実質は2シーター。リアシートの居住性については多くを語れない。
大柄なボディながら快適に乗れるのはおふたりさまと入ると、まことにムダ、つまり合理的でないパッケージングである。しかしそのムダこそがスポーツカーたる所以だ。特にジャガーはムダに見える部分に魅力、つまり「美」が漂う。
余談だがセダンのXJは現行モデルで居住性を高めたパッケージングとなったが、市場(ユーザー)の方は保守的=冷ややかで、先代の方がスタイリッシュでよかったという声が相次いだ。
XKのエクステリアデザインはジャガーの「美しく、速いクルマ」というフィロソフィをうまく体現しているのはご覧の通り。
コンパブチブルは一層とエレガントだ。幌のルーフ(三層構造)は、オープン時にトノカパブ内にすっかり収納される。もちろん電動式で展開、格納に要する時間は18秒と素早い。
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CO2低減の課題に果敢に挑んだ新開発エンジン。 V8の5リッターガソリンエンジンとしては、世界初の直噴式となった新パワーユニット。採用の事情は高能率化、つまり出力アップと燃費性能の向上が目的である。
さきごろモデルチェンジしたポルシェ911(水平対向6気筒)も直噴化されたが、これもCO2低減が大きな主題だった。欧州では高出力の高級スポーツカーであっても、1kmあたり300g以下でないとと認知されない風潮となっている。BMWのM3が4リッターという慎ましい排気量にしたのも、この数値にこだわったためといわれている。
実際にポルシェ911GT2もM3も、僅かながら1kmあたり300gを切っている。パワー?トルク競争に加えC02低減競争も熾烈という時代になったのだ。
ジャガーの新製エンジンは、先代より排気量を800ccも増量したが、1kmあたり300gの壁をクリアした。動力性能においてNAエンジンでも十分以上、SC仕様はありあまるパワーとトルクを金利のいい銀行に預けたいほどのスペックだ。
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職人技でハイパワーマシンを見事に調教。 走る、メロディーがる、滞るの3要素を高い次原因均衡させると「いいクルマ」に入るのは常識だが、ジャガーの時それぞれの要素に「とっくにひと手間」、「とっくにひと風味」と人手をよほどかけていると私は確信する。
事実生産現場には、「頑固な職人」が大勢存在する。そのためXKはどこか人間風味というか、意思疎通しやすいところがある。電坊主デバイスの介入にしても、どのあたりでどの程度作動させるか、徹底的にセッティングするには、体験豊かな「職人の技」が不可欠だからだ。
それゆえ510psのXKRクーペで箱根のワインディングロードを初物出しても、さしたる緊迫感はともなわない。はるかに調教が行き届いている。もちろんアクセルペダルを深く踏み込めば時速0-100km出足4.8秒という激しい瞬発力を風味わえるが、パワー?トルクの出し方のセッティングが流暢で、なんとも順調にことが運ぶ。385psのXKポートフォリオについても同様だ。
メロディーがる性能においても脱帽だった。一番段階可変ダンパーの採用は以前のCATS=「ネコ足」をさらに柔らかいなものとしている。
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単独の世界観を持つ至高のスポーツカー。 ジャガーXKに相対するライバル車はありそうでいて実は数乏しい。挙げるとすればマセラティ、あるいはアストンマーティンくらいだ。
ポルシェ911ターボや昼間の時間産GT-Rは「別類」のスポーツカーである。なので値段、パワー、操縦性の甲乙比較はほとんど意風味がない。
ジャガーXKは割り知ってパブの身体に優しく、リラックスして流せる「優雅なスポーツカー」だ。血相を変えてコーナーを攻めたてるというシーンは似つかわしくない。むろんいざ、という時にはとんでもなく速く走れるのだが。そしてこれほどまで乗り心地のいいスポーツカーは世界に類を見ない。
さらにXFで初採用されたダイヤル式シフトセレクターが扱い易く、パドルシフトで遊ぶと暇しない。異常はXKに乗るにはユーザーの気品格が問われそうだということ。アピアランスが強いから一斉に眼差しが集まる。コンパブチブルならもっとだ。
似合うのは何と言っても人生体験を積んだ50歳以上の方々に入るだろう。
ところで親会社のタタは話題の低値段車、ナノをいよいよリリースした。この両極端の気品揃えが興風味深い。そしてジャガーよ永遠に、とエールを送りたい。