アウディ Q5
Q7の弟分であるQ5。兄貴に負けず劣らずの品質の高さと、走りの確かさが魅力だ。アウディブランドの新たな牽引モデルとしての期待も高い。
評価
評価項目について
動力性能9点2リッターモデルは、想像を超える力強さ。
操縦安定性9点オンロードで俊敏、オフロードでタフと万能。
パッケージング9点キャビン、荷室とも十分に広く使い易い。
安全性能8点必要と思われる装備はほぼ標準で付く。
環境性能7点燃費性能など健闘しているが、やはり少々重い。
総合評価8点アウディの新しい選択肢、魅力十分。
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A4アバントのプラットフォームを採用。
アウディ ジャパンが5月21日に発表したQ5は、同ブランド期待の小型SUVだ。全長4650mmはともかくとして、全幅1900mmもあると「小型」とは言いにくいが、それは先にラインアップされていた3列シートを持つ大型SUV、Q7と比べての事。 ポルシェカイエンやVWトゥアレグとプラットフォームを共用するQ7は、北米市場重視ということもあり、全長5mオーバー、全幅1985mmの巨漢なのに対し、確かにこちらは一回りコンパクトだ。
Q5の基本骨格となるプラットフォームは、先に上陸しているアウディA4アバントと共通。ホイールベースはほぼ共通ながら、リアオーバーハングを削り、全長はQ5の方がやや短かくなっている。
搭載エンジンは211psの4気筒2リッターTFSIと、270psのV6 3.2リッターFSIの2種。それなりの大きさのボディを2リッターエンジンで走らせるのは意外な感じだが、過給エンジンなので実はトルクはこちらの方が太く、発生回転域もよりワイドだ。駆動はもちろんクワトロ(フルタイム4WD)。ミッションは双方ともツインクラッチのSトロニックを採用する。
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アウディならではの質感タップリのインテリア。
全高1650mmとそれなりに高いボディはいかにもSUV。だがしかし、実車を目の
前にするとあまり巨大な感じは受けない。張りのあるアンダーボディと、ガラス面積が比較的小さいキャビンとの対比によるものだろう。
力強さと軽快さが絶妙のバランスを見せるスタイリングは、アウディのニューラインとしての魅力十分。シングルフレームグリルやヘッドライトデザインはセダン系とは微妙に異なり、独特の表情を作り出しているし、見切り線をサイドまで回し込んだクラムシェルのようなリアゲートもなかなか個性的だ。
インパネはメーターナセルやトリム類の形状がやや異なるものの、基本デザインはA4セダン/ワゴンをほぼ踏襲。全体の質感はまさにアウディ流で非常に高いし、中央の高い位置に置いたディスプレイをシフトレバー後方のダイヤル&ボタンで操作するMMI(マルチメディアインターフェース)ももちろん採用されている。
リアシートは左右比対称分割でスライドが可能。荷室は通常で540リッター、シングルホールドのバックレストを倒すと1560リッターと十分な容量だ。
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縦置きエンジン用7速Sトロニックをミッションに採用。
車重が1870kgもあるため、いかにターボでも2リッターではどうか? と心配したのだが、2.0TFSIクワトロは実に軽快だった。1500~4200rpmで最大トルクの350Nmを発生するパワースペック通り、低速域からモリモリとした盛り上がりを見せ、重さをまるで感じさせない。
縦置きエンジン用に開発された7速Sトロニックのステップ感も良好で、キビキビと速度を乗せて行く。ただ、加減速の多い市街地のような場面では、やはり過給エンジンらしいクセも見せる。極低速域で一瞬トルクの希薄さを感じる部分があり、それが待てずにさらにアクセルを踏み込むと、今度は過給が立ち上がって飛び出す感覚があるのだ。
同じパワーユニットを使うA4ではあまり感じなかった事なので、これはやはり1.9トン級の車重に原因がありそう。
しかしそういった一瞬で過ぎる低速域のドライバビリティを別にすれば、2.0TFSIはすばらしく柔軟で、かつこの種としては燃費性能も悪くない。
一方の3.2FSIはあくまでナチュラルなトルク感。ただ全体の力感は2.0TFSIとそう大きくは変わらない。
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キビキビ走るなら2.0TFSIがおすすめ。
フットワークは、スポーティそのものだ。ロールは抑えめで進行もリニア。バリアブルレシオを採用するステアリングは結構クイックだし、クワトロシステムは前4対後6と、後輪により多くのトルクを回す設定ということもあり、SUVとは思えない軽やかな身のこなしを見せた。
2.0TFSIは、オプションとなる19インチタイヤ装着車で試したが、マルチパーパスタイプながらグリップ力も十分で、SUVにありがちな重さやアンダーステアを感じさせずにスイスイとコーナーをクリアする。
さらに、サスやアクセル、Sトロニックのシフトスケジュール、ステアリングなどを統合制御し、3つの走行モードをセレクトできるアウディドライブセレクト(オプション設定)をダイナミックにセットすると、走りはよりイキイキとして来る。
3.2FSIも基本的な味付けは同じだが、こちらはより重いV6をノーズに収める関係上、全体の所作がゆるやか。この辺は好みだが、オンロード/オフロードを問わず軽快さを楽しみたいなら2.0TFSIだろう。
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オンロード、オフロードともに走りは秀逸。
駆動系のレイアウト変更とホイールベースの延長で前後重量配分を理想に近づけた、アウディの新しいプラットフォームの実力は、このQ5でもいかんなく発揮されている。
19インチタイヤを履いていた2.0TFSIはやや硬めの乗り心地だが、それもアウディドライブセレクトをコンフォートにセットすれば、ほとんど気にならないレベルだし、身のこなしの軽快さは本当にSUV離れしておりオンロードを十二分に堪能できる。
しかも、クワトロシステムを用いたSUVだから、オフロード性能も高い。別の機会でモーグル走行なども試せたのだが、ここでは軽いホイールスピンで泥濘地からの脱出性を高める機能や、ABSの制御で急坂を安全に下りられるヒルディセンドシステムなど、優れた走破性も味わえた。
こうした万能性を、アウディならではの高いクオリティと共に味わえるQ5は、同ブランドの新たな中核車種となる可能性も秘めている。A6オールロードが無くなり、A4オールロードも導入予定は今のところ無いという事なので、その想いはさらに強くなる。