メルセデス・ベンツ Eクラスクーペ
7月29日に日本にお目見えした新型Eクラスクーペ。本国(ドイツ)仕様ながら、すでに日本導入の主力モデルE500(日本ではE550)クーペの試乗をドイツで行なっている。さっそくその時の模様をレポートすしよう。
評価
評価項目について
動力性能8点どのグレードも申し分ないパワー。特にE500(日本E550)は圧巻。
操縦安定性9点相変わらずの安心感、快適性も高い。
パッケージング9点スタイルも居住性も“優雅”の一言。
安全性能10点現在考えられる最新装備を満載。
環境性能7点CGIの日本導入が遅れるのは残念。
総合評価9点ミドルクーペの存在価値を再認識させる一台 。
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CLKからEクラスクーペへバトンタッチ。
メルセデスベンツの中核車種であるE クラスは、この5月には4代目となる形式名称W211の日本導入が開始された。しかし今のところボディはセダンのみ。これからステーションワゴンなどラインアップの拡充が図られていく。
ところで、メルセデスベンツはクーペもいくつか市場に投入しているが、これまでミドルサイズを受け持っていたCLKは、その名の通りCクラスのプラットフォームをベースとしていた。しかし今後は、居住性の向上を主な目的にEクラスベースにスイッチし、その名も新たにEクラスクーペとなる。今回はその新型クーペをドイツはシュツットガルトで、試乗したので報告したい。
Eクラスの常としてエンジンは豊富に設定されているが、今回乗れたのは、7月に日本にローンチした5.5リッターV8を積むE500クーペと、スプレーガイデッド方式ガソリン直噴3.5V6を搭載するE350CGIブルーエフィシエンシークーペの2台。
ちなみにE500は日本ではE550クーペと呼ばれる。またV6は当初直噴は搭載されず、しばらく既存のポート噴射3.5リッター搭載車が発売されている。
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世界トップクラスのCd値0.24を達成。
Eクーペのサイズは全長4698mm×全幅1786mm×全高1397mm。CLKより全長と全幅が若干拡大され、逆に全高は低い。新型Eセダンと較べると全長が約50mm、ホイールベースが100mm短くなっている。
スタイリングは側面に豊かな抑揚があり、薄い弧のようなサイドウインドーと相まってクーペらしい佇まい。前後をガラス・トゥ・ガラスで滑らかにつなぎ、フルオープンにすると前後窓が全てドア内に納まるあたりも美しい。
フロントマスクは、小振りな菱形4灯ライトと、スリーポインテッドスターのグリル埋め込みで精悍な表情。
リアビューも、傾斜を強めたルーフからの流れが奇麗だ。ちなみにCd値は世界最高峰の0.24を実現している。
インパネ周りの造形はセダンに準じるが、シフトレバーはコラム式のダイレクトセレクトから、クーペは通常のフロアシフトに変わっている。
リアシートはセンターに物置スペースがある2座席となっているが、ヘッドクリアランスや足下は身長170cmの僕が座っても余裕があり実用性も考慮されていた。
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500Nmの最大トルクで優雅な走りをエンジョイ。
まずはE500(日本E550)クーペから試したが、5461ccのV8エンジンは、すでに馴染みのあるところ。高回転域ではゴロゴロとした迫力の排気音を聞かせる。
しかし、アクセルを踏んだ時の初期の反応は意外やジェントルで、飛び出し感はしっかり抑えてある。もちろん深く踏み込めば500 Nmのトルクが即座に沸き上がり痛快だが、普段はそれをそれを隠し、ゆったりと落ち着いて走りを楽しむのが、エレガントなクーペに相応しい付き合い方のような気がした。
スプレーガイデッド式直噴の3498ccV6エンジンを搭載するE350CGIブルーエフィシエンシークーペは、環境と走る楽しさの両立を目指す新世代のパワーユニット。その回転フィールは洗練されており、以前のメルセデスのV6より味わいが増している。
Eクーペはこの他に、1.8リッター直噴ターボのE250CGIブルーエフィシエンシークーペも導入予定らしいが、これは残念ながら今回用意が無かった。
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あれた路面を気付かせない滑らかな乗り味。
試乗前に、快適性と路面とのコンタクト感を大切にしたと聞かされていたEクーペのフットワーク。
試乗車は20mmローダウンのスポーツサスペンションを装備した上に、サス、アクセルレスポンス、AT制御をノーマルとスポーツの2モードで切り替えるダイナミックハンドリングパッケージまで備えていたのだが、それをスポーツ側に設定しても実にスムーズな乗り心地を味わわせるのには驚いた。
路面の継ぎ目をゴツゴツと伝えて来るような荒さは皆無だし、コンクリートが剥離したような大きめの段差も当たりが優しく、しかも嫌な余韻などは一切残さずしなやかに収束する。まさに狙い通りの味付けだ。
それでいてハンドリングも甘くはない。ステアリングの応答性はメルセデス流にさほど敏感にはしていないが、どっしりとした味わいの中にも正確に向きが変わる気持ちよさがある。ザラついた感触をうまくカットしながら、掌に明確な接地感を伝えて来るのも前説の通り。スポーティな演出は控えめな分、気負わずに軽やかに楽しめるクルマに仕上がっている。
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Eクラスセダン同様豊富な安全デバイスを装備。
新型Eクラスは、数々の安全装備の採用でも知られるが、もちろんクーペも同様。
2種類のレーザーセンサーで車間を検知し警告するとともに、必要に応じてブレーキを掛けるディストロニックプラス、ステアリングなど70もの情報を元に居眠りを警告するアテンションアシスト、走行状況に応じてヘッドライト照射を連続的に制御し、ハイビームの自動切り替えなども行うアダプティブメインビームアシストなどなど、枚挙に暇が無いほどの技術が搭載された。
今回体験できたのは、速度標識を読み取りマルチインフォメーションに表示するスピードリミットアシストや、ディストロニックプラスの車間距離警告機能、それにセンターラインを踏むと車線逸脱をステアリングの振動で教えるレーンキーピングアシストなどだが、確かにこうした豊富なドライバー支援システムが、Eクーペのゆったりとした走りをサポートしている。
クーペは優雅な乗り物。メルセデスベンツEクーペはそんな事実を改めて想い起こさせてくれた。